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第4話 冷酷CEOの誓い

Penulis: 酔夫人
last update Tanggal publikasi: 2026-07-01 15:30:23

小春を抱きながら樹が車まで戻ると、運転席から秘書の柳沢やなさわが降りてきた。

「傘を」

「今さらだ」

樹が後ろのドアを見たため、柳沢はドアを急いで開ける。

小春を抱えたまま器用に樹が車に乗り込む。

樹が小春に向けた目を見て柳沢は戸惑った。

優しい。

もしくは、甘い。

冷酷と言われる上司の意外な表情に柳沢の動きが止まったが。

「出せ」

その一言で慌てて柳沢は運転席に向かった。

「空調を暖房で、最大にしろ」

樹の指示に従いつつ、雨だからと車に用意しておいたバスタオルを樹に渡す。

バックミラー越しに樹が割れ物を包むかのような慎重さで小春にバスタオルをかけるのを見る。

「なんだ?」

ミラー越しに樹と目が合う。

「いえ、その……病院へ向かいますか」

「……いや」

樹は腕の中で意識を失っている小春を見下ろした。

苦しそうな呼吸を繰り返している。

異常なくらい痩せている。

医者にみせる必要があることは素人でも分かる。

だが。

「自宅へ向かえ」

「……は?」

柳沢は耳を疑った。

樹が女性を自宅へ連れ帰るなど、一度もなかった。

相手が病人で人道支援の観点からかと考えたが、すぐに否定した。

それならば救急車を呼ぶ。

自宅に連れ帰るという選択のほうがおかしい。

そう思ったとき、ヒュウッと細い音が小春の口から漏れた。

次の瞬間に激しく咳込む。

「社長、すぐに総合病院へ搬送した方が……」

「ここから一番近いのは朝比奈総合病院だな」

「あそこならば夜間の受付もやっておりますので」

「あり得ない」

吐き捨てるような低い声。

激情を孕んだ声音に柳沢は言葉を失う。

「彼女を朝比奈家に帰すわけにはいかない」

樹の言葉に柳沢は理解した。

帰す。

つまり、この女性は朝比奈家のご令嬢。

皮膚科医で美容アドバイザーの称号を持つ朝比奈千夏は知っている。

知らない顔ということは。

「彼女が、例の悪女と言われる……」

「柳沢」

樹の静かな声にゾッとし、柳沢は急いで謝罪した。

「会社が契約している病院へ……」

「そこにも情報は流れる」

樹は考え、スマートフォンを取り出した。

数分後、樹の自宅に医者がすぐ派遣されることになった。

その間も樹の視線は小春から離れなかった。

熱で苦しいのか、小春は小さく眉を寄せる。

「……い」

小さな声。

樹は小春の口元に耳を寄せる。

「……ごめんなさい……」

か細い声が漏れた。

「悪い子で……ごめんなさい……」

樹の手が止まる。

眠っているだけだというのに、小春は誰かへ謝り続けていた。

「違う」

思わず声が漏れた。

「お前は悪くない」

返事はない。

当然だ。

夢の中でさえ謝り続けるほど、この女性は追い詰められている。

「急げ」

樹の一言で黒塗りの車は豪雨を切り裂くように走り出した。

車は夜の街を進み、やがて高い塀に囲まれた広大な屋敷へ到着した。

◇◇◇

「お帰りなさいませ」

使用人たちが一斉に頭を下げる。

しかし、樹が女性を抱いている姿を見た瞬間、彼らの表情が固まった。

「客室を用意しろ」

それに構うことなく樹は屋敷へと入る。

「すぐに暖房を上げろ。濡れた服を着替えさせる者を手配しろ。医師が到着したら真っ先にここへ案内するんだ」

矢継ぎ早に指示を出す。

使用人たちは驚きながらも慌ただしく動き始めた。

その様子を見ていた執事が小さく目を見開く。

樹は他人に興味を持たない。

まして女性を気遣う姿など、十年以上の付き合いがある彼も見たことがなかったからだ。

樹はベッドへ小春をそっと横たえると、熱で赤く染まった頬へ手を添えた。

「今度は俺がお前を守る」

眠る小春には届かない。

樹は静かに目を閉じる。

「あの日の恩を返すときがきたんだ」

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